クリ
チェスナット〔栗〕

Castanea spp.
(広葉樹林)
樹木  木材よりは果実のほうでなじみ深い樹木で、ヨーロッパ産の食用グリまたはスイート・チェスナットC.sativaは地中海
    沿岸の国々に自生し、他の地方でも古くから植栽されてきた。クリはまたアメリカや日本にも分布するが、アメリカン
    ・チェスナットC.dentataは胴枯れ病の惨害を受けた。ヨーロッパではクリは大木で、しばしば樹皮がらせん状の裂け目
    をもつことが特徴である。その木材もまたらせん木理をもつことが多く、伐採されたとき、太い幹がひどく裂けやすい
    のはそのためかもしれない。またクリは、ポール用材を採取するため、20年程度の伐採期で植栽されることもある。

木材  淡褐色で、年輪をはっきり示す。板目面はナラに似ているが、大きな放射組織をもたないので、柾目面はナラのような
    シルバーグレインを示さない。比重はナラより約20%低い。

加工性 クリはナラよりも軟らかく、強度が低いが、一般に加工はむしろ容易であり、利用の際の安定性もナラよりよい。
    乾燥時間は長くかかり、落込みを生じやすい。ナラ同様、心材は高い耐久性をもち、湿っぽい場所では鉄の留め具類を
    錆つかせる傾向があるので、材面が汚染される。

用途  耐久性があるので、戸外で用いるのに優れた木材である。小径木でも辺材の幅は狭く、保存処理を施せば立派な杭や
    柱になる。挽き割りにして冊用に用いられることも多く、家具に使用されることもある。クリの単板はやや地味では
    あるが、美しい壁板になる。
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