ピア
ナシ〔梨〕

Pyrus communis
(広葉樹林)
樹木  ナシは温帯北部に産する樹木で、果物用に広く植栽されており、その木材のほとんどは果樹園の老木からとられた
    ものである。樹高もせいぜい10m(例外的には15m)どまりのごく中庸の大きさの樹木で、幹の形も悪いことが多い。
    似たような木材は、マウンテンアッシュ(またはロワン)や、ワイルドサービス、ホワイトビーム(いずれもナナカ
    マドの類)からもとれるが、これらはいずれもナシよりやや淡色である。

木材  淡桃褐色で、均一で非常に精な肌目をもつ。リンゴよりも肌目は精で、木理は幹の形によって、通直が不規則である。
    やや重く、ブナとほぼ同じ程度である。

加工性 乾燥は遅く、とくに木理が不規則の場合には、狂いがちである。強い木材で、靱性に富むことで高く評価される。
    割裂は困難で、製材はかなり難しい。機械加工は良好で、仕上りは美しいが、切削刃物を鈍らせる作用があり、
    木理が不規則な木材の場合には注意が要る。耐朽性は低い。

用途  ナシの木材の用途は、供給が不安定であり、使える木材の寸法がほとんど小さいものばかりであったりするため、
    小さな旋作細工物や彫刻に、象嵌、寄木細工などに限られている。旋作はきわめて肌目が非常に精なので、彫刻用材
    としての需要が多い。T定規などの製図具、リコーダー、単板としてキャビネット、特殊な用途として時計類に使われ
    る宝石を磨くためのラップ盤などに用いられる。
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