チューリップウッド
Dalbergia spp.
(広葉樹林)
樹木  チューリップウッドはローズウッドと同じ属だが、材面は他の樹種とまったく異なる。ブラジルはチューリップウッド
    D.frutescens var. tomentosaの供給源として長い歴史をもつが、過去にはこれとよく似たD.oliveriがビルマからも
    供給された。ブラジル産のものは小型の樹木で、幹の形が悪いことが多く、長さ60-120cm、直径10-20cmの心材の
    短材が生産される。ビルマ産の樹木はもっと大型で、樹形もよく、非常に質のよい木材が得られる大きな丸太を産する。

木材  色調は非常に特異で、クリーム色の地に桃色ないし赤紫色の縞をもつ。この鮮やかな色調は外気にあたるとやや褪せるが、
    装飾的な外観は保たれる。木理は通直ないし交錯、肌目は精で、非常に重く、ローズウッドの高比重のものと同等である。

加工性 加工性ではローズウッドの重硬なタイプのものに似ている。乾燥時に割れが生じやすく、機械加工はささくれ立ちやすい
    ので難しいが、なめらかに仕上げると非常に光沢が出る。装飾的な良質のスライスド単板が切削できる。多くのローズ
    ウッドと同じく、加工の際ほのかな香りを発する。

用途  量的には決して十分ということはなかったが、チューリップウッドは今日まで象嵌や寄木細工にしばしば愛用され、
    ことに18世紀フランスの装飾家具において顕著であった。現在でも同じような用途、たとえばパネル類の装飾的な枠どり、
    オルゴールや宝石箱の象嵌に用いられている。製材品の形ではめったに見られない。
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